書評『チューリングの大聖堂(ジョージ・ダイソン):Turing’s Cathedral (George Dyson)』

チューリングとタイトルにはついているものの、実際には主にプリンストン高等研究所におけるフォン・ノイマンを中心とした、コンピューター黎明期の詳細な、人間視点での開発の記録。プリンストン以外にも平行して重要な開発が行われていたこと、特にヨーロッパでの記述やタイトルに出てくるチューリングに関する記述は予想外に少ないため客観的なコンピューター開発史というわけではないけれど、コンピューター黎明期の生き生きとした開発の過程、社会情勢、関わった多様な人物の息吹が感じ取れる貴重な記録(著者は高等研究所の研究員:フリーマン・ダイソンの子として登場人物の周辺で生まれ育ったサイエンスライター)。ネットワークの力がある分水嶺を超え、我々がこれまでに経験したことのない力と脅威がうまれつつある状況も歴史的文脈から示唆している。

KT