城一裕氏のおすすめ本 『電脳のレリギオ : ビッグデータ社会で心をつくる』

ドミニク・チェン『電脳のレリギオ:ビッグデータ社会で心をつくる』2015、NTT出版

 

10年来の友人による単著.

レリギオ(Religio)とは「再びつながる」ことを意味する語.情報技術が身の回りに遍在しているいま,その現実にどのように臨み,生きていくのか,本書にはそのためコンパスのつくり方が記されている.~論や~整理術といった,あたかもこうすれば上手くいく,と誤解をもたせるような既存の書籍とは一線を画し,誤解や偏見を解きほぐしながら常に自分を再構成し続けることの必要性を身近な具体例とともに,平易な文体ながらも鋭い筆致で説いている.

お金を目的とした情報,偏りを助長するメディア,課金を促すゲーム,というような非人間的なシステムへの最良の批評は,別のシステムを作ってみることである,というその倫理的な姿勢は,日常の中に潜む新たな感覚を呼び覚ます「メディアアート」を出自とした筆者ならでは.

建築情報学が目指す建築の情報技術を介した再統合に向けて,「情け」と「報い」を宿す情報をどのように読み書きしていけるのか,「プログラミングを学ぶ」ことをその端緒にした一例がここにある.

城一裕